クリスマス前に閣僚レベルの折衝も
日本と欧州連合(EU)が、経済連携協定(EPA)締結の年内での大筋合意に向けて、大詰めの交渉を行っていることが、日本政府関係者により明らかにされた。
12日から事務レベルトップによる首席交渉官会合が開かれ、詰めの調整を急いでいる。政治判断が必要な場合は、クリスマス前に閣僚レベルの折衝を行うとされている。
EPA(Economic Partnership Agreement)とは、自由貿易協定(FTA)を柱として、関税撤廃など通商上の障壁の除去だけでなく、締約国間での経済取引の円滑化、経済制度の調和、および、サービス・投資・電子商取引などのさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進などをも含めた条約である。
今回の交渉の焦点
交渉の焦点は、自動車や家電などにかけられている高関税の撤廃を求める日本と、チーズやワインなど乳製品、冷凍豚肉などの農産品の関税引き下げを求めるEUが、どれだけ歩み寄れるかである。
EUは、二国間協定発効直後に貿易額で日本から輸入される自動車部品の約80%を撤廃する見込みだが、日本はさらなる譲歩を望んでいるという。
それに対しEUは、農産物の関税に関し、TPPの合意内容を上回る自由化を求めている。これについては日本の国内産業への影響を懸念して、農林系議員から反発の声が上がっている。またEUは、JRなど公共性が高い企業による資材調達市場の開放も求めている。
合意を急ぐ背景
日欧EPA交渉は2013年に開始したものの、これまで交渉は難航してきた。14年11月の日EU首脳会談では、15年中の大筋合意を目指すことで一致したが、15年11月の首脳会談で「16年のできる限り早い時期」へと目標が先送りされていた。
今年中の合意を危ぶむ見方もあったが、アメリカでトランプ氏が次期大統領となったことで、TPP発効が困難となり、風向きが変わってきた。この状況の中、日本としてはEUとのEPAを早期発効することで自由貿易の機運を高めたい狙いがある。
安倍首相も国会答弁で「年内に大枠について合意を目指したい」と意欲を見せた。これは、EUでは来年3月に英国のEU離脱通知期限、4~5月にフランス大統領選、秋にドイツ総選挙などが予定されており、早期の大筋合意を逃せば、当面は交渉を棚上げせざるを得ない事情もあると見られている。
ただ、「交渉は最終段階だが厳しい交渉が続いている」という交渉関係筋の話もあり、首席交渉官会合の進展次第で閣僚会合を開き、「双方の関心が高い分野だけを先に政治決着させる」との見方があることを外務省幹部が示している。
(画像はReutersホームページより)

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