新しいルール
欧州委員会は12月1日、EU域内の電子商取引の付加価値税(VAT)環境を改善する一連の措置およびオンラインビジネスを支援するための新しいルールについての法案を提出した。
この中には、電子書籍のVAT税率に関し、紙媒体と同じ軽減税率の適用を加盟国に認めるとする旨の項目が含まれている。現行制度は、電子媒体は軽減税率適用可能な対象となっていない。
背景
欧州委員会はもともと、紙書籍は「文化財」で電子書籍は「電子サービス」とみなし、後者の税率は高くあるべきとしていたが、これに対し、ルクセンブルクとフランスは、電子書籍を「書籍」とみなして、紙書籍と同等の、それぞれ3%と5.5%の軽減税率を適用していた。
しかし、現在の電子書籍ブームが始まった2007年頃からAmazon、Apple、Koboなど海外電子書籍ストア大手は、ルクセンブルクに法人登記することで、高税率を回避した。
2015年1月、欧州委員会は対抗策として、電子書籍購入者の居住国をベースにVAT税率を適用するなど、税金逃れを阻止する新VATルールを施行した。また2015年3月5日には、EU司法裁判所が、電子書籍は「サービス品目」であり、軽減税率適用は違法であるとの判決を下した。
このEUの動きに対し、各国の出版業界団体が抗議を行うなど、電子サービスに関する見直しを求める声が上がった。これを受けて、今年になって方針が減税に転換されており、電子書籍のVATに関しては混乱状態が続いていた。
取引が国境越え、複雑化
このような問題は、本来、国内税のはずの付加価値税を、EUという単一市場に適用しようとするために発生するものである。
付加価値税が「消費税」であるからには、消費地の税率が適用され、その国の税収となると考えるのが原則だが、徴収は供給地で行う以上、国家間の精算システムが必要となる。
しかし、このようなシステムを構築することは、理論的には可能でも政治的に極めて難しい。今後、欧州委員会がどのようなアプローチで問題を解決していくかが注目される。

European Commission - Press release
http://europa.eu/rapid/press-release_IP-16-4010_en.htm